環境リスク内分泌攬乱化学物質(環境ホルモン)による人の健康や生態系への影響など、不確実性を伴う環境問題への対処が重要になっている。
このような問題については、科学的知見に某づいて、環境上の影響の大きさや発見の可能性などを予測し、対策の必要性や緊急性を評価し、政策判断の根拠を示すための考え方が、環境リスクの考え方である。
環境リスク評価は、多数の要因を考慮して政策と取り組みの優先順位を判断する場合や、環境媒体あるいは各分野を横断した効果的・整理的な対策を推進する場合の考え方としても有用である。
新基本計画では、以上のような考え方をもとに様々な施策が提案されていますが、その中でこれから大きな議論になると思われる「経済的手法」に触れている部分を紹介しておきます。
経済的手法とは、市場メカニズムを前提とし、経済的インセンティブの付与を介して、各主体の経済合理性に沿った行動を誘導することで、政策目標を達成する手法です。
特に、製品・サービスの取引価格に環境コストを適切に反映させるために経済的負担を課す環境に関する税、課徴金や預託金(デポジット)払い戻し制度、排出量取引制度などは、都市生活型の公害や廃棄物問題、地球温暖化の原因となる二酸化炭素(COこのような、不特定多数の者の日常的な社会経済活動から生じる環境負荷を低減させる点で、有効性が期待でき、資源の効率的配分にも効果的であると指摘しています。
第一回の基本計画では、経済的手法について、「これらの措置に付き、調査研究を進めるとともに、OECD等における国際的議論に積極的に参画する」という表現にとどまっていただけに、新基本計画は、かなり踏み込んだ表現になったといえるでしょう。
ただ、実施にあたっては、「他の手法との比較を行いながら、環境保全上の効果、国民経済に与える影響、技術的革新促進効果、適用に当たって必要とされる行政コストなどを総合的に考えて、その適切な活用を検討すべきである」と、腰の引けた「但し書き」をつけていることが、気になります。
ヨーロッパでは、温暖化対策として、化石燃料の消費抑制を図るために環境税(炭素税)の導入が大きな流れになっています。
すでに九〇年代前半に導入したスウェーデンやデンマークなどの北欧諸国だけではなく、ドイツでは九九年四月に、シュレーダー連立政権の下で環境税が導入されました。
ドイツに先駆けてイタリアも、同年一月に炭素税の導入に踏み切っています。
イギリスも二〇〇一年に気候変動税の導入に踏み切りました(V章参照)。
こうした流れ゛の中で、日本でも環境税の早期導入をめぐる論議が活発化してくると思われます。
冒頭でも指摘したように、九〇年代は、環境という視点からみれば、循環型社会を築くための様々な法律や制度が急速に整えられた画期的な10年でした。
もちろんこれらの法律や制度の中には、これから改善していかなくてはならない部分も少なくありません。
さらに今後は、風力発電や太陽光発電など再生可能でクリーンなエネルギーの普及を進めるため、自然エネルギー推進法(仮称)なども必要になってくるでしょう。
新しい世紀を迎えたいま、こうした環境インフラ(法律や制度)に支えられて、環境負荷の少ない資源循環型社会づくりに本格的に取り組む時代が到来しています。
二〇〇一年一月には環境庁が環境省に格上げされ、旧厚生省の廃棄物部門が新たに加わりました。
「庁」から「省」への昇格は、こうした時代の動向と無関係ではありません。
六〇年代の日本は、世界の奇跡といわれた高度経済成長を実現しましたが、その代償として深刻な公害を発生させてしまいました。
この公害問題を克服し、環境行政を総合的かつ効率的に実施していくために、すでに指摘したように、七一年に環境庁が新設されました。
それからちょうど三〇年目の二〇〇一年一月、環境庁は環境省へ格上げされたわけです。
環境の世紀へ向け、環境省の奮起が期待されます。
二〇〇〇年春の通常国会では、六つのリサイクル関連法案が成立し、「環境国会」と呼ばれました。
これらの法律のキーワードは「資源循環」です。
資源循環型社会づくりを促進させるための環境制度インフラを目指しています。
有害物質が含まれた廃棄物の増加と、最終処分場の不足が、深刻な社会問題を引き起こしています。
それが、これらの法案成立の背景にあります。
動き出す廃棄物のリサイクル環境という視点で一九九〇年代を振り返ると、環境悪化を防ぎ、資源循環型社会の構築を支援・促進させる様々な法律や制度が集中的に整備された、画期的な10年だったことが分かりましたが、九三年の環境基本法の成立を皮切りに、環境アセスメント法、改正省エネルギー法、地球温暖化対策推進法、さらにリサイクル促進のための容器包装リサイクル法、家電リサイクル法、また有害化学物質の排出・移動を規制するための化学物質管理法(略称PRTR法)、ダイオキシン対策法などが相次いで成立しました。
また二〇〇〇年の通常国会では、循環型社会形成推進基本法(循環型社会基本法)を軸に、改正廃棄物処理法、資源有効利用促進法(リサイクル法の再改正、法律名も再生資源利用促進法を改名)、食品循環資源再生利用促進法(食品リサイクル法)、建設工事資材再資源化法(建設リサイクル法)、さらに国や政府機関が環境に配慮した製品を優先的に購入することを義務づけたグリーン購入法の六つの法律が成立しました。
これだけのリサイクル関連法がひとつの国会で一気に成立したことは、これまでに例がなく、二〇〇〇年春の通常国会は、別名「環境国会」といわれました。
資源循環がキーワードの法律一九六〇年代から七〇年代初めにかけて重化学工業路線をひた走ってきた日本は、水俣病など四大公害訴訟に代表されるような、深刻な公害問題を発生させてしまいました。
その対策として七〇年秋の臨時国会では、大気・水質・土壌汚染や騒音などの公害を取り締まるため、公害対策関係一四法を一気に成立させました。
この時の国会をのちに「公害国会」と呼んでいることは、H章ですでに指摘した通りです。
この公害国会を中心に成立した一連の公害防止関連法と、九〇年代(二〇〇〇年の通常国会を含む)に成立した一連の環境保全・リサイクル促進関連法との間には、決定的な違いがあります。
公害国会で成立した法律は、公害を発生させる諸要因(有害廃棄物の排出、騒音、振動など)を直接法律で規制することにねらいがありました。
つまり有害物質を工場の外に出さないための規制、輸送機関などの騒音や振動が周辺住民へ与える悪影響を軽減させるための規制であり、いわば「エンドーオブーパイプ」(工場の最終工程での公害対策)の思想を前提としてつくられた法律でした。
現状を放置すれば公害が発生してしまうので、それをとりあえず防止しようとする対症療法的アプローチで、公害を断つことに全力が注がれていました。
そこには天然資源をリサイクルさせて大切に使うといった循環の思想は皆無でした。
これに対し、九〇年代に成立した法律は、いずれも資源の有効活用やリサイクルといった資源循環をキーワードにした法律です。
事業者に廃棄物の再資源化という新しいルールの定着を促す一方で、消費者、行政にも一定の役割分担を義稗づけています。
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